シンメトリーというデザインアプローチを利用すると、安定感や伝統感、権威などの印象を与えることができます。完全なシンメトリーが自然界に存在しないため、均衡のとれた対称性をもつデザインに、人は人為的に作りこまれた印象を感じます。それは結果として安定感や伝統感、権威などの演出に結びつくのです。
シンメトリーは頻繁に使われるデザイン手法のひとつで、世の中に出回る作品の多くから、何らかのシンメトリーを発見できます。それはシンメトリーがもつ対称性に、多くの人が整然とした美しさを感じるためです。
シンメトリーは一般的に左右対称と理解されているかと思いますが、デザインの現場では「対称」のことを言い、(目に見えない)縦の線を基準にした左右対称や、横の線を基準にした上下対象、中央の点を基準にした点対称などがあります。
今回は、数多くあるシンメトリーの中でも、最も多く利用される左右対称を利用したデザインを、美しく仕上げるコツを4つ紹介いたします。
1.重心は下に
冒頭で説明した通り、シンメトリーは、安定感や伝統感、権威などの印象を与える時に大変役立つデザインアプローチです。そのため、これらの印象とは真逆の効果をデザイン上に反映させれば、バランスの悪い作品となることがあります(意図してバランスを崩す作品もあり、その絶妙なバランスから美しさを感じることもあります)。
例えば、重心もその一つです。上記のイラストの通り、左は重心が低く、安定感を感じますが、反対に右は重心が上に位置し、緊張感を感じます。これは人が自然と画面上(紙面上)でも重力を感じているためだと言われています。鉛筆の上に消しゴムがあるより、消しゴムの上に鉛筆がある方がずっと安定しているように感じるのは画面上(紙面上)でも同じということです。
そのためシンメトリーの効果をより強めるためには、作品の下部に重心を持ってくることがポイントになります。
2.色の数は少なく、トーンはモノトーンorダーク
「シンメトリーは安定感、伝統感、権威といった印象を見る人に与える」ということを理解していれば、色選びもあまり悩まずにすむでしょう。
例えば、原色を5色以上利用したポップな配色は安定感、伝統感、権威といった印象と結びつきにくく、シンメトリーを利用する場合にはこういったポップな配色は好ましくないことがわかります。逆に、色数が少なく、モノトーンや暗めのトーンを中心とした配色であれば、安定感、伝統感、権威といった印象と結びつくと思います。ベースカラーに白やグレー、黒、ダークトーンの色を選択し、アクセントカラーにその作品で与えたい印象にマッチする色を選択すると、シンメトリー効果を最大限に発揮できます。
3.要素数は少なすぎず多すぎず
シンメトリー構造であるということを見る人に伝えるためには、作品の中に配置する要素(エレメント)の数も重要になります。要素数が極端に少ないと、その作品から対称性を感じにくく、逆に多すぎると、対称性よりも重量感や拡散性といった印象が強くなってしまいます。
作品を俯瞰して見たときに、きちんと対称性が感じ取れるように要素の数やボリュームを調整することが、シンメトリー効果を活かすポイントとなります。
4.文字はセンター揃えかカンパコ
左揃えや右揃えのテキストではシンメトリーが表現できないので、文字揃えは自然とセンター揃えになります。またカンパコと呼ばれるような、目に見えない透明な四角い箱の中に文字を左右揃えで並べる方法もあります。
シンメトリー効果を活かすためには、センター揃えかカンパコを選択することがベターです。
シンメトリーは見る人に安心感を与えることができる反面、単調でつまらないといった印象を与えてることもあります。シンメトリーが完ぺきに近づくほど単調な印象を与えやすいので、ポイントでアシンメトリー要素を取り入れ、デザインに動きを出すことも考えてみてください。
大事なことはその作品を通しで、見る人にどんな印象を与えたいかということを考えることです。そのうえで、色や形、配置やボリュームなどを工夫して作品全体のバランス取ることが理想ですが、まだ慣れないうちにシンメトリーを採用するのであれば、今回紹介した4つのポイントを踏まえていただければ、きっといいデザインに仕上げることができると思います。