昨今ではウェブサイトが企業と顧客との最初の接点になることが当たり前になりました。さらに少子高齢化によって優秀な人財の獲得が難しくなっているため、コーポレートサイトと合わせて採用サイトを造り込むケースが増えています。
ウェブサイトにおいて視覚的なデザインはもちろん重要ですが、コンテンツはそれ以上に重要です。デザインと機能、コンテンツなどウェブサイトの総合的な顧客体験が本当の意味でのブランディングにつながるからです。
しかしながら、実際のウェブサイト制作の現場では、文章(コンテンツ)の部分に関しては自社で用意するケースが多いため、顧客体験を意識して執筆するのが難しいところがあります。そこで、ハリウッド映画でも使われる普遍的なストーリーの法則を取り入れることで、簡単に魅力的なコンテンツに仕上げる方法をご紹介します。とくに会社紹介に取り入れることで自社のファンを獲得することもできるはずです。
なぜ魅力的な会社紹介にはストーリーが必要なのか?
「ストーリー」は日本語では物語のことです。物語は人間の興味を引くために記憶に残りやすい構造になっています。あなたも、教科書の内容は入ってこないけど、漫画の内容はよく覚えているのではないでしょうか? それは文章よりも絵が主体だということもありますが、それ以上にそこにあがけれているコンテンツがストーリーになっているからなのです。
たとえば、アニメの「ワンピース」を思い浮かべてみてください。ワンピースは主人公のルフィが仲間とともに海賊王を目指すストーリーになっています。ストーリーになっているため、キャラクターに親近が湧いてもっと詳しく知りたくります。仮に最初からルフィの技の解説や威力、ゾロの刀の歴史などを解説されていたとしたら、まったく頭に入ってこないなずです。
これを企業サイトに例えると、会社のことをよく知らない人に詳しい商品紹介をしているようなものです。そのまえに、会社に興味を持ってもらう必要があることは上述のワンピースの例えからも明らかです。そこで最も効果的なのが、ストーリーです。もちろん、ウェブサイトだけが営業のチャネルではないと思いますが、ストーリーは普遍的なので、すべての活動において核になる可能性を秘めています。
ストーリーを構成する7つのステージ
それでは具体的にどのように書けばいいのでしょうか? 文章が苦手な方でも、簡単に魅力的なストーリーをつくりだす方法があります。それは、以下の7つのステージに当てはめて考えるストーリー作成方法です。
- ステージ1.平穏な日常
- ステージ2.出会いと誘い
- ステージ3.試練を通して自覚
- ステージ4.最大の試練
- ステージ5.報酬を得る
- ステージ6.帰路
- ステージ7.日常に戻る
実際にハリウッド映画などで使われているストーリーの法則は、さらに細かく12個のステージに分かれています。しかし、映画や小説を書くわけではないので、会社紹介などに使いやすくするため、7ステップに分類しました。
ストーリーの法則の使い方
上述したストーリーの構成を使って、簡易な会社紹介文を作ってみましょう。創業社長の起業エピソードとともに、会社の事業内容などを伝えるストーリーになっています。少し長くなりますが、ストーリーの効果を体験できるのでぜひ読みすすめてみてください。
ステージ1.平穏な日常
あれは2020年東京オリンピックが開催された年のことです。当時の私は日本の上場企業で、管理職として働いていました。20人ほどの部下を抱え、妻も子供もおり、休日は趣味のトライアスロンのトレーニングに励んでいました。そんなある日、社長直々に呼び出しがありました。
ステージ2.出会いと誘い
それは、南アフリカでの農地開拓事業の責任者として現地に飛んでくれないかという相談でした。日本での生活に満足しており、家族のことを考えると断るという選択が当然です。ですが、子供の頃の夢を思い出しました。いつか大きな農園をつくりたい。異文化をつなぐような事がしたいという夢でした。
ステージ3.試練を通して自覚
家族に相談し、とりあえず1年間だけという約束で妻と子供を残して現地に飛び立ちました。責任者というのは名ばかりで、実際には現地の人たちと拙い英語でやり取りしながら、農地を耕し続ける日々です。日本での仕事とは真逆の肉体労働ですが、トライアスロンを趣味にしていた私はすでに身体が出来上がっていました。なにより、土にふれるというは気持ちのいい体験です。
ステージ4.最大の試練
半年ほどたったときのことです、現地を記録的な大雨が襲いました。それまで私たちが耕してきた農地の土が一瞬にして流され、また振り出しに戻ってしまいました。この大雨がきっかけで現地の人たちの士気が大きくさがり、100人ほどいた従業員の全員が来なくなってしまいました。
自然を相手にする事業の怖さと自分の無力さを痛感しましたが、私まで折れるわけにはいきません。自分の夢と日本にいる家族のためにも、自分ひとりでもやりづづけることを決めました。やがてその姿を見た従業員が、一人、また一人と戻ってきました。もちろん全員ではありませでしたが、そこには以前よりも強い結束力が生まれていました。
ステージ5.報酬を得る
そして、日本から南アフリカに来た1年後、無事に予定のフェーズまで達成できたのです。人種を超えて人はつながれる。そう実感できたことがなによりの報酬でした。この体験から、日本に帰ったら起業することを決めました。高齢化した日本の農家を、南アフリカなど途上国の人財と協力して運営していく事業です。
ステージ6.帰路
期待と不安が混じり合いながら、日本に帰る飛行機に乗り込みました。1年ぶりの飛行機です。離陸して、厚い雲を抜けると大きな日の出が見えました。自然とこの一年間を振り返り「どれだけ天気が悪くても、雲の上には青空が広がっているんだな」と感じ入ったときに、ふと思いついたのが現在の社名です。
「アマテラスサン株式会社」の「アマテラス」は日本神話の太陽神であるアマテラス。そこに敬称の「サン」をつけました。南アフリカの人たちが私のことを「さん」づけで呼んでくれていたのが、なんだか印象深かったからです。
ステージ7.日常に戻る
こうしてはじまった当社も創業10年目。現在では世界27カ国の農業に関わる会社となりました。これからも、地球の農地改革を推進してまいります。
いかがでしょうか? ストーリーの型にあてはめて文章を組み合わせただけですが、深く印象にのこり、会社に興味が湧いたのではないでしょうか。このように普遍的なストーリー構成の方法を使うだけで、魅力的な会社紹介を創作できるのです。
あなたにもストーリーは創れる
今回は記事では、普遍的なストーリーの法則にしたがって魅力的な会社紹介を創り出す方法についてお伝えしました。ストーリーを創るというとなんだが難しく感じますが、7つのステージに当てはめる方法を使うことでハードルは大きく下がります。
なにより、私達は普段から映画やマンガを通して多くのストーリーに接しています。その経験が養分となり、良いストーリーを生み出す土壌が出来上がっているのです。
土壌があり方法がわかっているのですから、あとはタネを植えるだけです。ぜひ、あなたの会社に眠っているストーリーのタネ(素材)を探すところからはじめてみてください。